午後8時ゴ−ルウエイ駅に着くと雨は止んでいた。少々肌寒い。駅は乗ってきたヒューストンよく似ている。改札口の乗降客はわずかで寂しい。「大変な田舎町」だと思いながら、薄暗いプラットホ−ムから駅の外に出た。「店は閉まっていて、街は暗闇の世界だろう」と思いつつ前方を見た。明るい店があり、すぐ横に超近代的な高級ホテルが建っている。周囲のレストランやパブも明かりが灯っている。それにタクシ−も走っている。アイルランド第三の都市ゴ−ルウエイだと安心した。夕食にありつけるようだ。嬉しさのあまりB&Bに電話をする事をすっかり忘れていた。街は雨上がりで石畳の道が濡れて光っている。しかし、その明るさも駅前を中心とした僅かな範囲のようだ。まるで、暗い宇宙空間にぽっかり浮かんだ小さな夢の島のようだ。少し肌寒くジャンパ−を着た。まだ9月末なのに寒さの為「ゾクッ、ゾクッ」と身震いした。お腹がすいているのでよけいに寒いのだろう。右手の通りは奥に行くにつれて暗く寂しい、左は明るい。
中心の高級ホテル前が小さい公園(ケネディパーク)になっている。公園がロ−タリの中心になっていて、数本の道路が公園を中心にして放射状に延びていてる。街はまだ人通りもあり多くの店が開いている。歩いている人達は、旅行者が多いように思える。若者の占める割合がダブリンよりは高い。この街もダブリン同様で車の数は少ない。こんな閑静な街は、ム−ド派なら最高だ。公園前にタクシ−乗り場がある。待ち客は少ないがけっこう利用されている。公園はとても明るく綺麗だ。薄暗い片隅で、「見苦しく抱き合っている若者」の姿はない。公園の数カ所に電話ボックスがある。時々全て使用中になる。利用者は若い女性が多い。電話ボックスはとても綺麗で「お誘いの張り紙」は一枚もない。人迷惑な携帯電話の「ピユリ、ピユリ・・・・」の音もない。電話ボックスの前で順番を待つことにした。話し終えた若い女性が出てきた。彼女は僕に「会釈」をして、街に消えて行った。ヒュ−ストン駅の彼女から貰った「紹介状」のB&Bに電話をした。すぐに年輩の婦人の応答があり快く予約を受けてくれた。
オ−ナ−から、住所、料金など必要なことを確認し、10時の入室の許可を得ておいた。彼女は「街からタクシーで5分ぐらいで来れます」と付け加えた。目の前の高層高級ホテルが、ひとつだけ聳えている。ここが街の中心の様だ。周囲には、駅と4階建て程度の古いビルが並んでいる。道路は狭くオコンネル通りのような広いものはない。比較的「イルミネ−ション」の輝いている方に歩いた。建物は3〜4階建ての小さいビルばかりだ。名前はウイリアムズ・ゲイト通りとなっている。車道は片側一車線でレストランや喫茶店が多い。一階が喫茶店二階がレストランの大きい店がある。入り口は深緑色の木枠に、大きい透明ガラスのドアーになっている。総ガラス張りの大きな窓から、奥までよく見えている。照明が黄白色の間接照明になっていて、部屋全体がほのぼのと暖かく感じられる。お客は、若者よりも中年の人が多い。
8時過ぎのメイン通りはまだ活気がある。バ−やレストランは、ダブリン同様夜おそくまで開いている。通りの奥に、5〜6人が順番を待っているシ−フ−ドの店がある。今晩は「待つ余裕」がないので、このレストラン&喫茶店に決めた。 |